清浄華院の僧であった向阿によって著わされた 『帰命本願抄』、『西脇要抄』、『父子相迎』 のいわゆる三部仮名抄は日本の浄土教を代表する仮名法語である。その三部仮名抄には、必ずしも古写本が多くは残されていない。しかし、古筆切として伝えられる断簡には伝称筆をその著書向阿にあてるものや、住蓮なる僧の筆蹟になる名物切 「星切」 といった古い資料があり、きわめて貴重である。本稿は従来個々に紹介されている三部仮名抄の古筆切に新資料を追加して集成し、既紹介資料の解題の誤りを補正するものである。本稿に収集した三部仮名抄の古筆切は、伝向阿筆 「三部仮名抄切」 六点と 「星切」 六点の合計十二点に及ぶ( 「星切」 には他に極礼のみが管見に入った一点がある)。“Kimyouhonganshou”, “Saiyoushou”, and “Hushisougou”are what is called “SanbuKanashou”. It represents the books of Jyoudokyou in Japan, and the writer is Koua, a priest of Syoujougein in Kyoto. There are few old books of “Sanbu Kanashou”left now. However some old pieces of paper, Kohitsugire, remain. They are divided into two groups, some pieces of paper which were written by Koua, and the others which were copied by Jyuure...